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2025年 6月

  • 坂東 玉三郎
  • 5 日前
  • 読了時間: 5分

 皆様、お元気でいらっしゃいますか。6月になりました。長いコメントになりますが、今回は4月の旅行のお話しをさせていただきたいと思います。5月は八代目尾上菊五郎さん、六代目尾上菊之助さんの襲名興行ということで、自宅と劇場の往復だけの生活でしたので、殆どご報告することがないからです。ただ3人で「京鹿子娘道成寺」を踊るということで、皆さんにご迷惑かけないようにと毎日、体調に気を付けておりました。そして無事に千秋楽を迎えられましたこと、本当に嬉しく思っております。ありがとうございました。

 歌舞伎座千秋楽のあくる日には八千代座に乗り込みまして、30日からの八千代座35周年公演の初日を無事に開けさせて頂きました。また八千代座35周年記念の写真集を、皆さまにお渡しできますことを大変嬉しく思っております。そして、その後は南座公演ということになりまして、小朝さんと「越路吹雪物語」を3日間上演しまして、その後に「口上」、「残月」、「夢二慕情」、「長崎十二景」を上演させていただきます。「夢二慕情」は38年ほど前に上演した作品を映像化したもので、3月から作っておりました。この6月の南座で初公開となりますので、皆様にご覧頂けることを大変に嬉しく思います。

 さて、4月の旅行は、先月のコメントでも少しお話ししましたが、最初、アメリカへ渡りまして、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場のオペラや、ブロードウェイでお芝居を観劇しました。そこで感じたことは、やはり演劇が大変厳しい時代に差し掛かってきたということです。私が初めて伺いました70年代のアメリカは「コーラスライン」などの素晴らしい作品が沢山生まれましたし、80年代はアンドルー・ロイド・ウェバーが出てきまして、とても華やかな時代だったのですが、今のアメリカでは若者のミュージカル離れもあるということでした。それはブロードウェイだけの問題ではないと思います。世界中の演劇が大変難しい時代を迎えているのです。ゲーム、あるいは映画などを自宅のテレビやパソコンで見られる時代になり、劇場に足を運ぶことがなかなか難しいことなのではないかと思いました。しかし、オフ・ブロードウェイでは独得の熱気がありまして、寄付をもらいながら演じるという状態なので、みんなの情熱を感じられて、何処か70年代、80年代のオン・ブロードウェイの雰囲気を味わうことができました。またガジリアン・バブルショーは、子供向けのシャボン玉のショーでしたけども、非常にアメリカ的に良くできていて、ラスベガスに行ったような気分になりました。

 さて、それからギリシャに向かうのですが、アテネには直行便が無いので、アメリカからは、チューリッヒを経由してアテネ空港へ、そこからまた3時間、車で走ったところの、「アマン・ゾイ」というホテルで滞在しました。プール付きのヴィラでした。今回の旅はコンサートのお知らせやカレンダーための撮影旅行でもありました。お天気ですが、ニューヨークでは土砂降りにあいましたが、ギリシャでも気候変動の為か、寒い日が多く、2日ほど雨も降りました。しかし、4日間は晴れて、島巡りなどをして、写真を撮ってまいりました。大変美しいホテルでしたので、ホテルのロビーを借りたり、お部屋を借りたりして敷地内でも良い写真を撮ることが出来ました。いずれ皆様にご覧いただけるようになると思います。ギリシャというのは非常に歴史の深い国で、文化や哲学の発祥の地として、やがてそこからローマへと繋がっていくというところでもあります。今後も是非行きたいなと思っております。それから、ギリシャ料理ですが、アマン・ゾイのホテルは非常に食材にこだわっておりまして、野菜はすべてオーガニック野菜で調理されていました。鳥も美味しい地鶏でした。ホテルには専属シェフが常駐しておりまして、朝と夕方は全てお部屋で完結できました。毎日食事をして気づいたのですが、日本料理とよく似てる調理法であることが分かりました。つまり、素材を大事にして、そこにオリーブオイルやペッパー、香辛料、ビネガーなどのドレッシングや、ちょっと塩気のあるチーズなどと一緒に食べるという、手を加え過ぎない料理で、パンもとても美味しくて沢山食べてしまいました。しかし、オリーブオイルのお蔭でしょうか、バターなどの脂質をあまり採ってなかったので体重が増えなかったというのは、ギリシャ料理との新鮮な出会いだったと思います。イタリア料理も日本人に合いますが、究極的に素材を生かした料理というのは、日本人によく合うということが理解できました。

 そのような旅行だったのですが、ハプニングが起こりました。帰国日に、アテネ空港がストライキを予定して、搭乗するはずの飛行機が飛ばなくなるという状況になり、慌てて1日前にアテネを脱出しました。イスタンブール空港経由だったのですが、乗り換えの待ち時間を合わせると36時間ほどかけて帰ってきたというわけでございます。今月の表紙に1枚だけギリシャの写真を載せさせて頂きます。

 この6月は先ほど申し上げました、八千代座公演、南座公演を終えますと8月歌舞伎座の「火の鳥」の集中稽古などをして過ごております。

 今月半ばには梅雨に入ります。皆様、お体を大事にお過ごしくださいませ。八千代座や南座でお目にかかりたいと思います。

 皆様素晴らしい6月をお過ごしくださいませ。

 
 
 
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