2025年 5月
- 坂東 玉三郎
- 4月30日
- 読了時間: 4分

皆様ご機嫌いかがですか。素晴らしい5月がやってまいりました。
今月は八代目尾上菊五郎襲名と、六代目尾上菊之助襲名披露興行に参加させて頂きます。「京鹿子娘道成寺」三人花子ということで、私も加わらせていただくことになりました。この大きな襲名興行に何とかお力添えできるように精一杯勤めたいと思っております。
昼の部の最後に「京鹿子娘道成寺」、夜の部の二幕目に「口上」ということになりますので、今月は劇場通いの毎日で1日が終わります。
4月はニューヨーク経由でギリシャに行ってまいりましたので、その報告をさせて頂きます。ニューヨークは久しぶりでしたので、お芝居とかミュージカルをいろいろ観たいと思っておりましたが、時間的に沢山観ることは出来ませんでした。見たい劇場を少し回ったという感じです。そしてメトロポリタン歌劇場(MET)にも行きました。METに入るのは私が出演して以来で、40年ぶりくらいになります。「魔笛」と「アイーダ」を観ました。一観客としてMETに入るということで新鮮な気持ちになりましたし、『あぁ、こんなに大きい劇場に出させていただいたんだなぁ』という思いでいっぱいでした。ニューヨークでは観劇後に強い雨が降りました。土砂降りだったのです。ギリシャでも雨が降りました。やはり世界中の気候が変動していることを感じました。
今回ニューヨークではブロードウェイでお芝居とミュージカルを観て過ごしましたが、オフ・ブロードウェイでは、約40数年前にミュージカル化された、「リトルショップ・オブ・ホラーズ」と、アガサクリスティ作品をパロディ化された「ザ・プレイ・ゴーズ・ロング」を観ました。オフ・ブロードウェイはすごく活気があり嬉しく思いました。そして終演後には『この公演はお客様からの寄付をいただいて続けられているので、寄付をお願いします』というスピーチがありました。そんな気持からお金を集めて、やっと公演ができたという情熱で公演が盛り上がっていました。やはり、オフ・ブロードウェイの活気というものは特別だなという思いがしました。それから「ガジリオン・バブル・ショー」という、子供が喜ぶシャボン玉のショーも観ました。童心にかえって、とても楽しかったです。
それからギリシャに向かったのでが、ギリシャでも雨の日がありましたが、今後の為の写真を撮ってきました。コロナ禍の4年間は海外にも出かけられなかったので、カレンダーやコンサートのお知らせなどに掲載する写真が全くありませんでした。そこで今回、ニューヨークとギリシャを回って撮影をしてきたのです。ギリシャのホテルに到着しますと、ご挨拶する前にお名前を呼んでくださりお出迎えしてくださいました。スタッフさん達は事前に皆のパスポートと顔を覚えていたんだと思います。私のこともパソコンで調べていたのかも知れないと思い、自分の本名をパソコンで検索したらどんなことが書いてあるのだろうと「ウィキペディア」を開いてみました。「坂東玉三郎」と出てまして、そこに皆様に誤解を抱くようなことが掲載されていましたので、そのような誤解を解きたいという思いで少し書かせて頂きます。「ウィキペディア」の私の経歴の中に、「六代目歌右衛門さんとの間に永年の確執があった。(後和解)」と載っていました。これは全く自分には覚えのないことなのです。つまり、間違いなのです。実際私は、六代目中村歌右衛門先輩に憧れて歌舞伎役者になりましたし、33歳も年上の大先輩と「確執」など起こるわけがありません。これまでも、大いに尊敬し、教えをいただいておりましたし、19歳の時、国立劇場小劇場における、若手歌舞伎勉強会で「妹背山女庭訓」の「金殿の場」からお教えをいただきまして、その後「鳴神」、「熊谷陣屋」の「相模」、晩年は「伽羅先代萩」の「政岡」や「籠釣瓶花街酔醒」の「八ツ橋」など、沢山お役をご指導いただきまして、梅玉兄さんと共演しているときには毎日観に来てくださって、お芝居の直しをしていただいたという間柄でございますので、確執などは全くありませんでした。当然、確執が無いのですから、和解ということも無いのです。歌舞伎座100周年の時には助六の「揚巻」も丁寧にお教え頂きました。晩年はお体を弱くなさっておりまして、「阿古屋」をはじめ、多くのお役を沢山お渡しいただきましたことは、成駒屋さんがお急ぎになって、僕にお渡し下さったものだというふうにも考えております。こういう世の中ですから「フェイク・ニュース」が沢山出回っていることもあります。このような時代になり、皆の心を騒がすことが多くなりましたし、国際的にも問題になっているかと思いますが、この場で訂正させて頂きたく思います。この文章は皆さまの為に、一年間は掲載させて頂こうと思っております。これを読んでくださった方々にご理解いただきまして、他の皆様にもその事柄をお伝えいただきたければ幸いでございます。
先ほども申し上げました通り、5月は劇場通い毎日の為、ご報告があまりないと思いますので、6月のコメントで更にギリシャの思い出を交えてお話させて頂きたいと思っております。
それでは5月歌舞伎座にてご来場お待ち申し上げております。
皆様、素晴らしい5月をお過ごしくださいませ。
当該記述は元々出典がないまま書かれておりました。該当箇所を除去いたしました。