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◆ 2014年6月

皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか。いよいよ6月に入りました。5月前半、私は広島県三原市での舞踊公演の翌日、11日に天皇陛下の傘寿祝い昼食会の前に東宮御所で「雪」を舞わせていただきました。本当に緊張の1日でございましたが大変に有難く栄誉なことでございました。  5月後半は沖縄で「聞得大君誕生」の再演と、新作組踊「蓬莱島」を上演させていただきました。この「蓬莱島」は組踊の数々の古典舞踊を選び、一つの作品のように構成し、新作組踊として今回は、昨年国立劇場おきなわの芸術監督に就任されました嘉数道彦さんと一緒に作らせていただきました。この時期、沖縄は梅雨入りしておりまして、沖縄入りした日と帰京した日は晴天に恵まれましたが、やはり本州の梅雨とは少し違いまして、雨が強く降ってきたかと思えば晴れ間の有る空に変わったり、天気が良くても急に雨が降ってきたりと、モルディブやタヒチのような、南の島独特の天候を感じました。  一昨年からこの組踊に取り組み、去年の3月に沖縄の国立劇場と東京の国立劇場の上演に参加させていただきましたが、昆劇同様、歌舞伎とは全く違う様式の組踊の世界に、私が入らせていただくことを本拠地ではなかなか認めていただけないとは思います。しかし芸能者として勉強させて頂けたことは本当に有りがたいことでした。お陰様で大勢のお客様にご来場いただき、また若い世代の舞踊家の方々とも交流が持て、色々と学ぶことが出来ました。  5月の初旬に「フエルサ・ブルータ」という大変面白いパフォーマンスを見に行きました。11年前に「ビーシャ・ビーシャ」という作品を見ましたが、その次回作が「フエルサ・ブルータ」という今回の作品でした。「ビーシャ・ビーシャ」は2人の演出家で作られたそうですが、今回の「フエルサ・ブルータ」は1人で作ったそうです。やはりラテン系の作品は非常にダイナミックで、日本の風土ではなかなかこのような作品には出逢えないという驚きがありました。  ところで、今ここでこんなことを申し上げることもおかしなことですが、3年前に鎌倉の花火大会に行っておりました時に、花火が上がるたびに携帯電話で撮影されている人達が沢山いました。そして今回の「フエルサ・ブルータ」でも面白い場面では携帯電話を取り出して撮影している人が多くいました。その場で自分が生で体験していることよりも、カメラの小さいレンズを通して見ることが頭脳に組み込まれてしまっている悲しさを感じたのです。私は生の舞台や、生で見る花火の素晴らしさを、自分の感覚として記憶したいのですが、現代は、写真や動画を通してでしか自分の感覚に取り入れられない世の中になり、本当の自分の五感で味わうことが出来なくなってしまったんだなあ・・・と思いました。これから先の日本の芸能や芸術のありようなどが大きく様変わりしていくのは当然でしょう。歩きながら、または乗り物に乗って移動しているときにでも携帯電話を開いて何かを見ている人も数多くいます。自分自身ではなく、機械を通してのコミュニケーションを取ることに慣れすぎたのでしょう。本当の人間同士が面と向かってコミュニケーションを取るという感情が希薄になってゆく時代です。実際私もパソコンで予定表を見たり、伝言のやり取りをしていますが、現実の物事は自分の身体で感じるということを忘れないようしたいと強く思ったのです。  さて6月は、沖縄で上演しました「組踊」を南座で5日から12日まで、その後2日間のお休みを挟んで15日から舞踊公演で「鉤簾の戸」「黒髪」「金ヶ岬」を舞わせていただきます。久しぶりの6月の京都で皆様と劇場にてお目にかかれますことを楽しみにしております。

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