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2023年 3月


 皆様お元気でいらっしゃいますか。3月になりました。今月は3日に初日を開けます歌舞伎座で、吉井勇さん作の「髑髏尼」、そして片岡愛之助さんと「吉田屋」の「夕霧」を務めさせていただきます。

 さて2月はほとんど公のお仕事はしておりませんでした。1月の松竹座100周年記念公演が終わりましたので、少し気持ちに余裕を持たせた方が良いだろうということで、自宅でのんびりと過ごしておりました。先日もお話し申し上げました通り、一昨年から延期になっていたお仕事が、2021年の後半にずれ込んできましたので、2021年の10月から、今年の1月までほとんどお休みなく動いていたというのが事実です。1月の松竹座公演の「幽玄」の時は、去年の暮れに仕込みを済ませ、再び元旦に大阪へ乗り込んで初日を迎えるということでしたので、ほとんどお休みを取れずに過ごしておりました。お陰様でお正月は大勢のお客様にご来場いただきまして大変嬉しく思いますし、松竹座100周年記念をお祝い出来きましたことを改めて有難く思いました。

 そんなことを感じながら自宅でお昼寝をし、自宅でご飯を食べるという2月の前半を過ごしておりました。半ばごろからは3月の「髑髏尼」のお稽古、そして5月に姫路城で開催されます、平成中村座の「天守物語」のお稽古をしておりました。私が3月4月と舞台に出ておりまして、「天守物語」に出演の皆さんのお稽古をすることが出来ませんので、この2月のお休みの時に中村勘九郎さん、中村七之助さん、中村虎之助さん、腰元の方々、そして中村扇雀さんなどのお稽古をしておりました。

 そして後半からは「髑髏尼」のお稽古に集中しておりました。この「髑髏尼」は大正6年に初演されましたが、私が12歳の昭和37年の時に歌舞伎座で朧げに観ておりました頃は、ほとんど初演のような気持で観ておりました。と申しますのも武智鉄二さんが補綴・演出をなさっていて、原作とはかなり違った作品になっていたのです。今回は今井豊茂さんに補綴をしていただきまして、原作に近く戻し、しかも歌舞伎座でお客様にお楽しみいただけますように作ってまいりました。初演は市村座の小さい間口での上演でしたので、台本通りに演出が出来たと思いますが、歌舞伎座の大きさとなりますと、歌舞伎座に合った演出がなされなければなりません。1時間足らずの上演でございます。実に「吉田屋」の明るさとは裏腹に「滅びた平家の恨みを晴らす」というお芝居でございます。しかしそのような暗さの中にも、日本の儚さが、どこかに漂ってくるような不思議なお話しでございます。そして二幕目は愛之助さんと初めてご一緒します「吉田屋」でございます。これまで長い事「夕霧」を務めさせていただきましたが、今回はどのように皆様の前に登場できますか、私も心して演じたいと思います。思い返せば2月は寒い日が多くありました。北の方では大雪が降っていたそうでございますし、雪のための渋滞で大変な思いをされた方も多いと思います。今月末にはいよいよ桜の開花が待たれます。今月はこの二役を精一杯務めさせていただきたいと思います。

 そして4月は歌舞伎座新開場十周年記念公演で片岡仁左衛門さんとの共演とさせていただきます。

 春の兆し、暖かい日々が待たれるこの3月でございます。皆様どうぞお体にお気をつけてお過ごしくださいませ。それでは歌舞伎座でお待ち申し上げております。

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