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◇2017年11月


 皆様お元気でいらっしゃいますか。11月になりました。

 今、八千代座で初めての「映像×舞踊」公演を行なっております。この公演では「口上」の後に少し舞踊の解説などをお話しさせていただきます。これは初めての試みとなりますが八千代座ならではのお楽しみを皆様にお届け出来たらと思います。「鷺娘」と「京鹿子娘道成寺」は上演しないとお話ししておりましたが、今回は映像の他に一部だけ舞台に立たせて頂まして皆様にご覧頂ければと思い、安易な考えではありますが「映像と舞踊」の八千代座公演とさせていただきました。

 昼の部は「口上」と「京鹿子娘道成寺」。夕の部では「口上」と「鷺娘」ですが、この「鷺娘」の前には「稲船」と合わせましての夕の部とさせていただきました。

 今回は珍しく昼夕の公演となりましたが、全編を踊りませんので、このようなこともできたのだと思います。このお話は去年の八千代座が終わりました時に発案いたしましたが、この公演を皆様にどのように受け止めて頂けるか、またどのようにお楽しみいただけますか分かりませんが、出来るだけお楽しみいただけますように仕立てるつもりでおります。今回、少しでも成果が上がりましたら、他の作品でもこのような形態で上演していきたいとも考えております。今年の夏に八千代座で映像のテストをした際、少しでも大きな映像を映すスクリーンを設置したいと思いました、自分が登場します時に、そのスクリーンを巻き上げるのですが、スクリーンの後ろにありますブルーバックにも映像が映し出されておりましたので、それも効果的に使えればと考えております。

 10月は歌舞伎座で初役の「孤城落月」で「淀の方」を演じさせていただきました。この「淀の方」という役は『私がやることは無いかもしれない』と思っておりましたが、近年新しい芝居を私は出来ませんでしたので、初役ということでどこか新鮮な雰囲気をと考え上演させていただきました。台本を読み込んで行きますと大変に難しく「誰に対して台詞を言っているのか」など実演では分かり難いお芝居だということが幕を開けましてから気づいたわけでございます。もう一つ気づきましたのは、この「淀の方」という人物は、豊臣家が滅びるということが、もちろん大きな問題として錯乱しているわけなのですが、私が思いますには「秀頼」のことを考えている「母の心」だということが分かったのでございます。その中で母親の物語、そして大きくはこの「孤城落月」の中での主役は「秀頼」だと見えてくるのでございます。また「淀の方」の現実が分からなくなった状態というものをお見せするようなお芝居でございましたが、私は「淀の方」はそれぞれが言っていることは分かっていながらも、分かりたくないという中での現実逃避をしていく物語なのではないかと思ったわけでございます。周りの配役の方々も若手をと考えて上演致しておりましたが、もうそれぞれの俳優さんたちは30歳過ぎて一人前の俳優さん達になられておりまして、歌舞伎俳優としての重みも身についているように感じてまいりましたし、大人の俳優として取り組んでくださったことが大変嬉しく思いました。また「秋の色種」では梅枝君と児太郎君に琴を弾いてもらいまして、この「秋の色種」がやっと舞台に上がったという思いが致しましたこの10月でございました。

 11月の八千代座が終わりますと、越路吹雪さんの37回忌記念コンサートをヤマハホールで開催いたします。7日にはNHKの「うたコン」という番組に生出演で越路吹雪さんの歌「枯葉」を歌わせていただくことになります。3月29日、日生劇場で行われました「越路吹雪37回忌記念コンサート」からのご縁でこのようなことになりましたが、精一杯やらせていただきます。皆様にお楽しみいただけましたら幸いでございます。

そして11月末には12月歌舞伎座興行の「瞼の母」と「楊貴妃」の準備にかかりたいと思います。それでは皆様お風邪など召しませぬようお過ごし下さいませ。

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