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◆ 2014年5月

皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか。連休中、色々な仕事が詰まっておりまして、5月のコメントが遅れてしまいました。申し訳ございません。  花の5月の素晴らしい季節がやってまいりました。4月は三月歌舞伎座で上演いたしました「日本振袖始」と「二人藤娘」を収録した映像の編集作業と、佐渡で鼓童の新作のお稽古を行いました。今年の佐渡は暖かくなるのが遅く、4月10日頃から毎年桜が咲き始めますが、今年はまだ14日頃でも七分咲きほどで遅い桜でした。27日に東京に帰ってきましたが、そのころにもまだ3分ほど残っている状態でハラハラ桜が散る情景を楽しむことはできませんでした。しかし東京では桜が散ってしまった頃、佐渡でこれから咲き始める桜を見られましたことは春を2度楽しめたような気がしました。  また10年ほど前から楽屋見舞いとして頂いております牡丹をその都度佐渡に持って行き、佐渡の土に植え替えた牡丹が大変大きく育ち、嬉しく思っております。牡丹は元々木でございます。ただし中国から輸入されます時に、木のままでは日本にはなかなか根付きませんので、芍薬の根に接ぎ木をして日本に牡丹を咲かせたという歴史がございます。須賀川の牡丹園では立派な木になっておりましてお屋敷の二階に届くほどに何百輪もの花がついているようです。  今回改めて佐渡の牡丹を見て、10年もの歳月が経ちますと幹がまるで木のように太くなっておりまして、やはり自然の中ではすくすく育つんだなという思いがしました。浜離宮にも牡丹の庭園がありますが、そこは膝から下位の背丈ですが、佐渡の牡丹は私の胸くらいの高さまで育ちました。初めは5輪ほどの牡丹でしたが、今では一株に2~30輪の白や黄色の牡丹が咲くほどになりました。去年の歌舞伎座再開場に頂きました牡丹も佐渡に持って行き植え替えましたが、夏の時期でしたので『こんな暑い時期に植え替えたら根っこがダメになってしまうかもしれない』と心配しておりましたが、この4月に見ました時は立派に育っておりまして嬉しく思いました。しかも2輪の花の蕾を持っていました。実は同時期にもう一株植え替えたのですがその一株は冬の時期には枯れてしまって『もうダメなのかな』と思っておりましたが、この4月は花こそは咲いておりませんでしたが、無事に生き返っておりました。そして5年ほど前に持っていきました牡丹は、人のあまり来ない少し離れたところに植えたのですが、日当たりも土の栄養も問題ないと思うのですが、この牡丹だけは蕾も見られませんでした。やはり人の気がしないからなのでしょうか…。花や木は人の気で育つと聞いたことがあります。團十郎さんのご自宅に牡丹がありまして、以前『牡丹は時々花をお休みにする年がある』とお聞きしたのを思い出しました。この牡丹も今年はお休みだったのでしょう。  久しぶりに牡丹のお話が出来ましたが、帰京する27日にはまだ様々な花が残っていて、さらに八重桜が開花しているにもかかわらず連翹や木蓮の蕾がでているという、4月5月の花が一斉に咲いている北独特の春の季節を感じることが出来ました。  28日に行われました「歌舞伎座新開場一周年記念式典」に出席しますために27日に帰京しましたが、地方のゆっくりとした時間はやはり落ち着くと思ってまいりましたが、東京駅に着き自宅に向かいまして都会の景色を見ておりますとどこかホッとした私はやはり都会で育ってきたんだなという気がしました。またこの4月の末には「紫綬褒章」を受章させて頂きまして、皆様にはお褒めのお言葉などを頂きますと、大変有難いと共に、お恥ずかしくもあり、何より重い責任を感じる今日この頃でございます。これから先の次代の皆様のために精一杯力を尽くし努力精進し、また皆様のために成れればと思うこの初夏でございます。  今月は沖縄で「組踊」公演。来月は南座で「組踊」と「地唄舞」の公演を開催させていただきます。皆様に劇場でお目にかかれますことを楽しみにしております。

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