◇2021年9月


 みなさまいかがお過ごしでしょうか。お陰様で、7月末の南座の舞踊公演、そして同じく8月の南座舞踊公演を無事に終了出来ましたこと、誠に有難く皆様に御礼申し上げます。このような状況下にもかかわらずお客様が大勢おいで下さいました。本当に有難うございました。この7月末と、8月の京都は猛暑にもなりましたが大雨の降り続く日々もありました。自然というものは様々な姿を表します。宇宙から来る波を受けて、雨風や、山川を創り、心を癒してくれることもありますが、人間には時に冷酷な現象を与えます。災害に遭われた方たちの苦しい、悲しい心を察しますと、自然のもっている力に対してあまりにも無力な人間の切なさを痛感します。お慰めする言葉さえ簡単に申し上げられない思いです。一日も早く日常に戻られることを願うばかりです。

 このような時期ですので、沢山の京都の名所を見て回ることは出来ませんでしたが、7月の末にはお寺を訪ねました。世間の騒ぎとは事を分けて静かに佇むその雰囲気、人気の無い時間、自然を取り込んだその建物、これも人間に創った物なのだなあ・・・と、不思議な想いがありました。山と川、草木、それにお天気も含めて、これも自然の成せる技とも思いました。美術品や骨董などを観て歩いておりますと、人間は美しい物も創りますし、自然を破壊させることもあるのです。経済至上主義に伴う温暖化に伴う気候変動、生活の為とはいえ人間の物創りから来る「プラスティックなど廃棄物の残留」が、海といわず陸といわず、北極や南極などにも残ってしまう有様を考えると、居ても立ってもいられない気持ちになります。それもこれも根源的な、人間の欲望の現れでもあるのでしょう。そして人間は、そのような世の中に、お寺や寺院を創って、自分自身を考える時間を持つようになったのでしょうか。

 さて9月は「東海道四谷怪談」のお岩を演じさせて頂きます。38年ぶりの「四谷怪談」となります。33歳の時に初役で演じさせていただきましたが、「四谷怪談」は本当に役創りが重く、なかなか再演という運びにならなかったのも事実です。この時期に御岩様は「浪宅」のみ上演ということで実現できたのだと思いますます。京都で「東海道四谷怪談」のポスターの為の撮影が行われました。

 まだまだ暑い日が続くと思います。9月歌舞伎座公演でも皆様に、この厳しい現実お忘れ頂けますように一生懸命努めたいと思っております。この夏が過ぎましても、まだまだ9月は暑い日が続くのでしょうか。そのようなことを言っているうちに、秋がやって来ます、そして冬がやって来ます。こうして時が過ぎて行くことを、時代が過ぎ去って行くことを痛感する今日この頃でございます。

 それでは皆様、どうぞお身体に気をつけてお過ごしくださいませ。御縁に導かれ、舞台からお目にかかれますならば、一時の舞台の夢の時間お楽しみ下さいませ。