◇2021年3月


 いよいよ桜の開花が待たれる3月に入りました。皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか。皆さまも長い自粛生活で疲労が溜まっているのではないかと心配しております。しかしこのような生活が続きましても、やはり季節は巡ってくるものです。そして今月末からは桜が楽しめます。

去年から徐々にではありますが、歌舞伎公演が開催されております。2月には片岡仁左衛門さんと久しぶりに「於染久松色読販」の(煙草屋)と油屋の(ゆすりの場)、その後に二人での「神田祭」を上演させていただきました。お陰様でお客様も大勢ご来場下さいまして、大変嬉しい1ヵ月でございました。この2月は時々寒い日があり、お客様のことなど心配もしておりましたが、私どももなんとか無事に千秋楽を迎えることができました。

 3月は歌舞伎座では初演の「隅田川」をAプログラムとして、また「雪」と「鐘ヶ岬」をBプログラムとして上演させていただくことになりました。「鐘ヶ岬」は玉三郎を襲名する前の年に初めて舞台で踊らせて頂いてから、もう50年以上も経つのでございます。今回の歌舞伎座でも皆様が十分にお楽しみいただけますように、美術や演出も考えておりました。昨年の12月の「日本振袖始」からは紗幕を使いまして、演奏家の皆さんを紗幕の後ろ側に居ていただくという演出を考えていました。その理由は「飛沫を防ぐ」ために、演奏家の皆さんに「黒いマスク」を掛けさせて舞台の明るいところに出してしまうことが、私としては心苦しく思っていたからです。今年はこのような演出をしばらく続けさせていただくとになると思います。「隅田川」でも紗幕の向こう側に清元さんに居て頂いただくことになりますし、地唄の清琴さんも、いつもよりは奥側で演奏していただくこととなります。こうした新しい演出を考える中で更に新しい様式も生まれてくるのではないかなと思うこともあります。実際「日本振袖始」は紗幕を使うことによって深みのある雰囲気が得られたと思いました。

 さて、この2月には「三船敏郎さん」のドキュメンタリー番組を拝見したのですが、三船さんの生き様をそのままを番組で見ているような思いになりました。番組を見ておりますと、三船さんは色々なことを考え抜いてスタッフの皆さんや、共演者の皆さんにも大きな気遣いをなさっておられた事が理解できて大変感動いたしました。それに三船さんが戦争というものをどう考えておられたか、また御両親とも早くにお別れられた三船さんの哀歓がひしひしと伝わってまいりました。そういう意味で、三船さんの様々な面が映画の画面に出現して、荒々しくも自然に見える演技、勇壮な肉体の裏側に有る深みが醸し出されたことから「世界の三船」と言われるようになった気がするのです。私も過去には数々の名優と共演をさせていただきまして、色々な事を思い出しながら2月を過ごさせていただいたわけでございます。 

 さて今月のYouTubeですが、地唄舞を撮影することが出来ませんでしたので、2011年のパラオに行きました時のダイビングの映像でございます。ナレーションも入れずにそのまま2分くらいの映像を皆様にお届けいたします。このYouTubeもそろそろ1年を迎えますが、この後どういう風に進めていくか、あるいはこのコロナ禍の自粛生活が終わりましたら、YouTubeではなく、やはり皆様とは劇場でお目にかかることを主にして行きたいなあ・・・とも考えているのです。

 まだまだ厳しい生活が続くと思いますが、この春を十分に味わいながら将来に希望を持って生きていきたいと思うのです。まだ寒い日も有ると思いますが、皆様どうぞお体をお大事にお過ごしくださいませ。それでは劇場でお待ち申し上げております。