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◇2021年10月


 皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか。いよいよ10月・・・素晴らしい秋がやってまいりました。

 9月の歌舞伎座は、38年ぶりの「東海道四谷怪談」で「浪宅の場」と「穏亡堀の場」に出演させて頂きました。久しぶりの「四谷怪談」の「お岩様」で緊張も致しましたが、初演の時とはまた違う毎日を送らせて頂きました。今回は通しではありませんでしたし、早変わりもありませんでしたので「浪宅の場」にだけに集中できるという状況も幸いだったのだと思います。また、先日のコメントでも申し上げましたが、お岩様のお墓や、お岩稲荷などに参拝させて頂きましたことで、『お岩様を一生懸命演じることによって供養になっているのではないか…』という不思議な気分もしたのです。勿論お芝居は、人々の魂を慰めるということが基本にあるのだと思いますが、今回は何故かそのような空気が流れてきた不思議な9月の歌舞伎座でした。

 世の中の状況が変わって公演が中止になるのではないかなどと心配もしておりましたが、お陰様で連日満員のお客様においでいただきまして、無事に千秋楽を迎えることが出来ましたことを大変嬉しく思います。誠にありがとうございました。

 さて10月は名古屋御園座公演でございます。なんと名古屋で一ケ月公演をいたしますのは20年振りになるのです。前回は舞踊公演で短い期間だったのですが、長い期間の公演が20年振りということに改めて驚いております。新しく立て替えられました御園座で成駒屋さんの三人のご兄弟と「口上」「阿古屋」そして成駒屋三兄弟の「石橋」という演目になります。橋之助さん、福之助さん、歌之助さんもこの大役が決まりましてからは、夏前頃から徐々にお稽古をしてまいりました。これからもこうした若い世代の方々が立派に歌舞伎座を開けられるようになってほしいと思います。私が申し上げますのも僭越ではございますが、皆様何卒ご寛容のご見物の程お願い申し上げます。これまで各座で「阿古屋」を演じてまいりましたが、過去の御園座では「三曲糸の調べ」だけでしたので、この度「阿古屋」を上演させて頂く運びとなりました事を大変嬉しく思っております。若い方との共演で、私も力をいただいて精一杯務めさせていただきたいと思っております。

 この10月が過ぎますと、11月には熱海MOA美術館での舞踊公演も控えております。この秋は一段落しまして年末から、来年へかけての計画などを練りこんでいきたいと思います。

 まだまだ外を出歩くということは油断が出来無い状況でもあります。公演を受け持つ私どもとしましては、充実した舞台を務められますように、そしてまた無事に初日を開けて千秋楽を迎えられますように。更にはご来場下さいますお客様が、ご無事にご観覧出来ますようにただ願うばかりでございます。

 やっと涼しい日がやって参ります。皆様もお身体お大事にお過ごしくださいませ。

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