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◆2020年3月


皆様いかがお過ごしでいらっしゃいましょうか。今は「コロナウイルス」のこともありまして、劇場もお休みとなっています。皆さまどうかお大事にお過ごしくださいませ。

2月は「十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善狂言」として、「菅原伝授手習鑑」「道明寺」の段の「覚寿」を演じさせていただきました。これまで「先代萩」の「政岡」、「九段目」の「戸無瀬」、あるいは「吉野川」の「定高」など大役をやらせていただき、この「覚寿」は今回で2回目ではございましたが、改めて大変素晴らしいお役であるということを感じました。この年齢になりまして演じさせていただくには、丁度良いお役かなとも思いました。歌舞伎で言いますと、いわゆる「白」という鬘を被るのですが、老婆役がこんなに活躍して意味の大きいお役は珍しいと思います。10年前に演じさせていただきました時は60歳だったのですが、今年はあまり皺を書き足さなくても演じられるお役になりました。

 そして夜の部は「羽衣」でございました。昼に老婆を演じて、夜に若いお役をやりますことは順番が逆になりまして、実は意外と力を使うものでございます。例えば「四谷怪談」では、浪宅で髪すきが終わった後に、夢の場で美しくなる場面、あるいは「桜姫」の「権助」の家の場の後に、終幕の雷門の場で美しい桜姫に戻る、つまりお役が終わって行った後に、もう一度最初の美しい姫に戻っていくということに力のいるものでございます。これは実際に演じなければ分からないことではございますが、役者の1日、あるいはお芝居の流れに逆行するということの難しさをつくづく感じるのでございます。

 お陰様でこの2月は、大役の「覚寿」と「羽衣」に終始して、充実したひと月を過ごさせていただきました。世の中は新型の肺炎などで騒がしくしておりましたが歌舞伎座には大変大勢のお客様にご来場くださいました。心から御礼申し上げる次第でございます。また十三世片岡仁左衛門さんの追善興行が、この歌舞伎座で盛大に行われましたことを本当に嬉しく思いますし、私も毎日誠心誠意努めさせていただいた次第でございます。

 さてこの3月は、後半になりましたら桜が開花するのでしょうか。あっという間に春が訪れる素晴らしい季節となります。

3月中旬は、博多座で開催されます「越路吹雪40回忌コンサート」に出演させていただきます。

そして4月末には、南座で「世界のうた」の再演を開催させて頂き、5月は京丹後、熱海、八千代座での舞踊会となります。

 それでは皆様お身体に、お気を付けてお過ごしくださいませ。 

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