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◇2019年10月


皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか。やっと涼しい10月がやってまいりました。

 9月初旬の御園座舞踊公演以外、舞台はお休みでしたので、歌舞伎座などの公演中には出来ない仕事の整理や準備を行っておりました。近年は集中豪雨が度々日本列島の各地を襲い、今年も大きな被害を受けた地区がありました。この御園座公演の最終日の8日には、大型台風が名古屋に接近しておりまして大変心配しておりましたが、何とか無事に千秋楽を迎えることができました。今年は熱海の舞踊会での大雨、下関の舞踊公演での台風の接近、そして御園座公演の台風ということに悩まされまして、ご来場くださいますお客様の心配をしておりましたが、お陰様で何とか無事に行うことができました。

 先月のコメントでご報告し忘れてしまっていたことがございます。納涼歌舞伎の明くる日の8月の28日に国立劇場で「古典芸能を未来へ」という公演が開催されまして、私は「老松」を踊らせていただきました。大曲でもあり、これまでに4回ほど舞台で踊らせていただいておりましたが、それでも10年に1度の割合でしか踊っていない「老松」を1日の舞踊公演でご披露するというのは、NHKの収録もあり大変緊張するものでございました。観世清和様のご子息の観世三郎太さん、田中傳左衛門さんのご子息の亀井忠昭さん、田中傳次郎さんのご子息の亀井太一さんが揃ってご出演されまして『継承というものが実際に身の回りで起こっているのだな』と実感したのでございます。

 その後は10月歌舞伎座「二人静」の準備などをいたしておりました。作曲は杵屋巳太郎さんにお願いしまして、歌舞伎の方からは義太夫のお三味線をお願いすることになりましたが、お琴の方は珍しく初めて沢井忠夫様の門下の方の市川慎様ほかの皆さまにご一緒していていただきます。「二人静」はお能から取りましたものを私が補綴致しまして、加筆はせずに原作の割愛だけの上演台本を作りまして新しい歌舞伎舞踊とさせて頂きました。振り付けは、花柳壽應様と、花柳壽輔様にお願い致しました。お能では後シテが唐織着流しに、長絹という形でございますが、やはり歌舞伎座ということもあり、唐織に長絹では踊ることに制約もございますので、緋の長袴に水干という形で演出させて頂きました。そういう意味で長唄、義太夫、お琴も入りまして、音楽的に充実した「二人静」になればと願っているところでございます。2日には初日が開きますが、何とか無事に皆様にご披露できればと思っております。

 10月後半には29年目になります八千代座に参ります。来年には八千代座公演も一区切りにいたしまして、将来の人たちに受け継いで行って貰い、ますます繁栄を迎えられる八千代座に成ってもらいたいと考えております。そういう意味で、将来は私だけではなく、色々な方々に八千代座に来ていただくという計画を立てているところでございます。その内容が近々わかると思いますのでその時に発表させていただきます。

 それでは皆様素晴らしい深まる秋のひと時、美味しいもの沢山ありますので、食べすぎをしないように、お楽しみ下さいませ。

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