皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
九月歌舞伎座における『秀山祭』で夜の部の最後に新作歌舞伎舞踊『幽玄』を上演させて頂きました。誠に嬉しくありがたい思いでございます。今年は夏から秋にかけて天候不順の話題ばかりで、大雨が降り地震の災害もがあったりしました。困難の多い八月九月でしたが、無事にこの九月の歌舞伎座公演を務めさせて頂きました事は皆様方のお陰と厚く御礼申し上げます。
この『幽玄』は、鼓童と一緒に仕事を致しまして、共演ということでは第1作目の2006年の『アマテラス』に続く、第2作目という事になります。能楽の先生、お囃子の先生、振付家と専門家の方々の多大な、お力添えをいただき、鼓童の皆と一緒に佐渡で創って参りましたこの作品がこうして歌舞伎座で上演できました事は夢にも思っていませんでしたし、幸なことでした。私は数々の名作の舞台に出させて頂きましたし大役も上演させて頂きましたが、自分が創作した作品というものにはやはり特別な思いがございます。その自分が創った作品をこうして一つの演目として歌舞伎座で上演出来るという事は、やはり稀な事だという思いが致します。私はただ思った通り感じた通り心の赴くままに創って参りましたのですが、こうして上演できました事が本当にありがたい事だとつくづく今になって思う次第でございます。多くのお客様にご来場頂けますかどうか本当に心配しておりましたが、なんとかお恥ずかしくないところまでやって来られまして、お客様にご覧に入れることが出来、大変ありがたく重ねて御礼申し上げます。とにかくそんな歌舞伎座公演でしたので、九月は自宅と歌舞伎座を往復するのみで何もする事が出来ませんでした。今月は早いもので十八代目中村勘三郎さんの七回忌の追善公演でございます。私は十数年前に勘三郎さんと一緒に踊らせて頂きました『吉野山』の静御前を今回は勘九郎さんとご一緒に舞台を務めさせて頂きます。そして大詰めは仁左衛門さんが助六にお出になるという事で、私は助六の母の満江を演じさせて頂くこととなりました。
やっと涼風も立ち、これから素晴らしい日本の秋がやって参ります。十一月は、八千代座公演の後、14日に金沢市で妙成寺五重塔建立四百年記念 シネマ歌舞伎「鷺娘」上映解説会&トークショーの公演がございます。サイトでのご案内もございます。皆様のご来場をお待ち申し上げております。
十月の追善公演が成功裏に終わります事を祈りながら最善を尽くしたいと思っております。九月あたりからは風邪が流行っていたという事でございます。皆様もどうか天候不順の折、お身体をお大事にお過ごし下さいませ。
それでは歌舞伎座でお目にかかりましょう。皆様のお越しをお待ち申し上げております。