◆ 2014年7月

June 30, 2014

皆様お元気でいらっしゃいますか。今は梅雨の真っ最中です。
 6月は南座で、沖縄の組踊公演と地唄の舞踊公演を開催させていただきました。6月4日から梅雨入りとなりまして、6月3日に京都へ入られました沖縄の皆様には梅雨の京都しかお見せできないと残念に思っておりました。しかし組踊の千秋楽付近には天気の良い日がありまして、少しでも京都を楽しんで頂けて良かったと思っています。
 公演内容としましては、5月の沖縄公演と同じ演目でございました。京都も沢山のお客様にご来場頂きまして、本当に有りがたく思っております。また、沖縄の方には南座での公演は勿論のことですが、8日間の連続公演も初めてとのことでございましたので、皆様とても張り切って毎日を送り、また楽しく無事に千秋楽を迎えることが出来ました。そして15日から1週間開催させていただきました地唄の舞踊公演も、お陰様で無事に千秋楽を迎えることが出来ました。
 地唄の舞踊公演が終わりましてから早々に帰京し、7月歌舞伎座興行のお稽古に入りました。久々の「天守物語」と、25年振りとなります「夏祭浪花鑑」の「お辰」は、心新たに演じたいと思っております。
 ところで毎月のコメントで色々なお話をさせていただいておりますが、特に将来の文化、芸術などに付いて、私なりの心細さをお話させていただきたいと思います。数カ月前に小紋(小さい柄)や、縞の男物の浴衣が少なくなったことをお話しさせていただきましたが、これは私ども歌舞伎役者にとっては、とても辛いことなのです。「夏は地味な浴衣でお稽古する」というのが言わず語らずの習わしになっておりまして、派手な色の浴衣や、大きな柄の入った浴衣などに私共は慣れておりません。という意味もあり少なくなってきた小紋や縞の浴衣などを早いうちに買い揃えておりました。博多織の帯なども、とても派手な色になってしまい、渋い色の帯も大変少なくなりました。また、私は楽屋用の上履きには、底がフェルトになっている草履を使っておりますが、こちらも現在では大変手に入りにくいものとなってしまいました。また、刺繍などに使う金糸も東京で取り扱うお店は大変少なくなっているそうです。今は京都に注文しなければなりませんが、昔は5色あった金糸も、現在は1色しかない時代になってしまったそうです。「鷺娘」で使用しておりました紗の傘も、骨の柔らかな「たゆみ」が出るような作りになっていましたが、現代では丸みのある傘が作れなくなっているのです。「雪」を舞う時に使います傘も、30代後半からの傘を大事に使っておりました。こういう舞台で使用するも物も、現在の生活で使う古典的なものも、現代では作れない苦しい時代になってしまっていることをひしひしと感じます。景気や時代の流れでもありましょう。それぞれの工房で、勤めている職人さんの『手が空いてしまう日がある』と嘆いておりました。この現象は私どもだけではありません。お能、狂言、文楽などの世界でも同じようなことが起こっていると思います。
 私も40歳くらいから、このような工芸品がどんどん無くなっていくことを憂いておりましたが、京都の織物の状況を聞いた時には、本当に落ち込んでしまいました。刺繍が出来なくなり織物が織れなくなってしまったら、古典芸能や歌舞伎の美というものが失われてしまいます。少しでも盛んになるようにと、私も色々と考えておりましたが、今では本当に良い状況とは言えなくなってしまいました。それぞれの国の文化や、崇高な芸術が理解し難い世の中、受け入れられない状況になってきたということを感じ、今後のことを思い悩む日々が多くなってきています。
 今月のコメントで全てをお話しすることは出ません。来月、再来月と毎月の公演の御報告をさせて頂きながら、来月からは日本文化の危機などのお話なども少しずつさせていただきたいと思っております。私達専門家だけではなく、皆様にも日本の素晴らしい芸術、工芸などにもう一度目を向け、お気に掛けて頂けましたら、素晴らしい物が少しずつ再生してゆくのかもしれません。これからも日本の素晴らしさを少しずつお話したいと思っております。それでは劇場でお目にかかれますことを楽しみにしております。

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